milk or coffee? 〜甘く、苦く、溶かされて〜
「…うわぁぁぁぁ!それは…してないです!」


慌てて彼方さんの口を塞ぐ。


…キスはしてない!

ちょっと唇の端が触れただけ…!


「それに、どうしてクリーム取るだけであんなことっ…」

「いいやん。ちょっと奪ってみたくなっただけ」

「奪ってみたくって…、だれからですか?」

「遥」


そう言って、彼方さんは人差し指でわたしの顎をくいっと持ち上げる。


「そもそも、なんで俺が初対面のみひろちゃんの名前知ってたと思う?」


たしかに、…言われてみたらそうだ。


「それはな、遥から聞いててん。最近店に、かわいい女の子がきたって。名前は“みひろちゃん”って」


――“かわいい”。

遥さんがそんなことを。


「でも、女性客は他にもたくさんいますし、ひと目見ただけでわたしが“みひろ”だなんてわかるはず――」
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