milk or coffee? 〜甘く、苦く、溶かされて〜
その男の人は、引き戸にかけていた【OPEN】と書かれたドアプレートをひっくり返して、【CLOSE】を表にした。


…あっ、閉店。


スマホの画面を見ると、【20:05】と表示されていた。


お店…20時までだったんだ。


せっかく見つけたいい感じの雰囲気漂う古民家カフェ。

ちょうどお腹も空いていて、楽しみだったのに…。


…仕方ない。


わたしはその場で肩を落とす。


そのとき――。


グゥゥゥゥゥウウウウ〜…


とんでもない低い悲鳴がお腹から聞こえた。

おいしいごはんにありつけると思ったらお預けをくらって、どうやら限界だったようだ。


慌ててお腹を押さえるけれど、そんなことはお構いなしにお腹の虫は鳴き続ける。

だから、気づかれないはずがなかった。


「…あっ、えっと…。もしかして、お客さん…ですか?」
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