執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
プロローグ
高層マンションの上層階。窓の外には都心の夜景が広がり、リビングにはモデルルームのようにハイセンスな大型家具。
そこで美都は真っ白い革のソファに押し倒され、艶めいた眼差しを向けられていた。
「いいんだよな? 美都を俺のものにしても」
そう言って、美都の上に影を落としているのは獅子峰哉明、三十三歳。
FBIに出向経験を持つ、出世コース驀進中のキャリア警察官。
頭脳明晰もさることながら、鍛え上げられた肉体と整った美貌を持ち合わせている、完全無欠な男である。
「……まだ、婚姻届は提出していないので、正確には哉明さんのものではありません」
そんな彼との結婚をごねているのは喜咲美都、恋も愛もまだよくわからない二十七歳。ごく普通の会社員で、哉明とは到底釣り合わない女である。
愛嬌のない表情、かわいげのない口調。
しかし、まったく媚びないその姿勢は、哉明の好奇心を大いにかき立てている。
「だがもうすぐ名実ともに俺のものになる。……って認識でいいんだろ?」