執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
哉明のひと言に、驚きすぎて悲鳴すら上がらなかった。まだ結婚すると決まったわけではないのに高価な指輪をプレゼントされても困る。

「……哉明、さん?」

表情を引きつらせながら異議を訴えると。

「なにを驚いている? 婚約したんだから、婚約指輪を送るのは当然だろう」

さも当然のように言われ、ああ確かにそうなのかな?と納得しかける。

結婚したときは結婚指輪。婚約したときは婚約指輪。間違ってはない。

同時に、もう自分は哉明の手の内から逃れられないのではないかという危機感を覚えた。囲い込まれている気がしなくもない。

(もしかしなくても私は、婚約というものを甘く見過ぎていた……)

今さら後悔してももう遅い。目の前には推定ウン百万の指輪が並んでいる。値札がないのはあえてか、哉明が気を使って外させた可能もある。

「安そうなものを、なんて考えるなよ」

ただダイヤが大きいから高いというわけではないのだろう。メインストーン以外にもたくさんのダイヤが散りばめられていて、素人に値段の判別は不可能。

「こんな高価な指輪の目利きなんてできません」

< 103 / 257 >

この作品をシェア

pagetop