執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
買わなかったらそれはそれで、哉明の顔に泥を塗る。

人生最大の難問を突き付けられたようで頭が痛い。

「美都は、花が好きなんだよな」

哉明のひと言にスタッフが反応する。

「でしたら、こちらはいかがでしょう? ひまわりをモチーフにしたリングで、小粒のダイヤが花びらのようにセンターストーンを囲んでいるんですよ」

ダイヤがたくさんついていて、随分とゴージャスな指輪だなあと気後れしていた美都だが、ひまわりだと思えばかわいらしい。

美都が目を見開くと、哉明はニヤリと口もとを緩める。

(あ、また顔色を読もうとしてる)

慌てて口もとを引き締めた。そうそう読まれてはたまらない。

「フラワーモチーフですと、このようなデザインもございますが」

スタッフが奥のケースから取り出してきたのは、同じく花の形をした指輪だが、今度はセンターストーンより花びらが大きくて、まるでコスモスの花のようだった。

「かわいい……」

思わずぽつりと漏れた。美都が初めて漏らした好意的な感想に、周囲は食いついてくる。

「こちら、忘れな草をモチーフにしたジュエリーコレクションとなっておりまして――」

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