執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「私、美都ちゃんを救ってくれたその人に、ご挨拶がしたくなってきたわぁ……」

背筋が冷える。会おうなどと考えない雲の上の人――だったはずなのに、杏樹はその雲の上に手を伸ばそうとしている。

「む、無理ですよ。帝東大の三年生って、何人いると思ってるんですか? 学部すらわからないんですから」

「父の知り合いに、警察庁で働いている方がいるの。十年前に入庁した帝東大生を探せば突き止められるかもしれないわ」

しまった、と美都は思った。ヒントを与えすぎた。

「でも、本当に警察官になったとは限りませんし」

「ううん。きっとなっていると思う。私にはわかるの。これは運命よ。今も独身で、美都ちゃんを待ってくれている」

うっとりと浸り出してしまったので、もうあきらめるしかないと悟る。

「…………もし見つかったら、お礼をお伝えください」

どうかその方がすでに結婚していますように。祈るような気持ちで目を閉じた。




しかし祈りは叶わず、杏樹が新たな釣書を持ってくるのに一カ月とかからなかった。

「美都ちゃん! 見つかったわよぉ、運命の人」

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