執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
本音にもかかわらず、美都は一向に信じようとしない。自身の美しさにまったく気づいていないのだろう。

(その自然体がまたいいんだけどな)

気取らず美しい、ありのままの美都が好きだ。しかし哉明の一途な恋心は、まったく本人に届いていない。



ヨガが終わると美都は朝食作りを始めた。

ひとつひとつの作業を丁寧にこなしていく。淡々と、だが面倒くさがらず手を抜かず、黙々と野菜を切っていく姿が哉明は好きだ。

(朝食なんてまともに食べたの、いつぶりだろうな)

夜遅くに帰宅し、朝は水だけ飲んで慌ただしく家を出る。そんな不摂生を続けていたからだろうか、美都を見ていると背筋が伸びる。

(こまめに掃除をしたり、アイロンをかけたり。とにかく働き者なんだよな、こいつは)

日中は働いているのだから、家の中ではもっと怠けてもらっても構わないのだが。

だが本人は苦労を苦労と思わない質らしく、なにを言ってもスンとしている。

今朝は洋食のようで、トーストの香ばしい匂いがリビングに漂ってくる。

和洋中、哉明が飽きないように変化をつけてくれているらしい。頭が下がる。

「あの、哉明さん」

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