執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
なんとなく答えを予想しつつも、尋ねてみると。

「趣味のようなものですから」

「料理が?」

「……いえ。納得した生活をするのが、です」

なるほど、と頷く。日々のタスクをきちんとこなすことに満足感を得るタイプか。

夕食を作るなと言ったら、楽をするどころが逆にそわそわして落ち着かないのだろう。

「もちろん、哉明さんがデリバリーの方が舌に合うというんでしたら――」

「言わない。美都の作る料理の方がおいしい」

「そう……ですか」

美都がぱちぱちと瞼を上下させ、目を逸らした。ツンとした顔をしつつも、わずかに目もとが緩み、唇があひるのようになっている。

(これは……照れてるな)

うまく表情に気持ちを載せられないところがまた一段とかわいらしい。

美都という沼にずぶずぶとはまり始めているのは自覚していて、いつしか聞こえのいいプロポーズは本心に変わっていた。

「だが、うまく手を抜けよ。忙しかったり、体調がよくなかったりするのに頑張る必要はないからな」

すぐ無理をするタイプだろうと踏んで念を押す。

美都は納得したように「はい」と頷き、口もとを綻ばせた。

(……調子が狂うな)
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