執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
フィルム越しの再会に、緊張して釣書を持つ手に汗がじわりと滲む。

当時の彼は二十一歳。写真の中の彼は三十三歳――頼もしさと男らしさが増していて、今の美都から見ても、とても素敵な人だと思った。

はっきりとした目鼻立ちにキリリとした眉。左目の下には小さなホクロ。清潔感のあるミディアムヘアに、上質なブラックのスーツがよく似合っている。

当時とは別人のようでありながら、懐かしさも感じる。

感極まって、指先で頬の輪郭に触れると、見ていた杏樹がくすりと笑った。

恥ずかしくなって、慌てて手を引っ込める。

「間違いなかったみたいね。よかった」

杏樹のひと言にしまったと俯く。

しらばっくれるどころか、「はい、そうです」と言わんばかりの確信的な態度ではないか。

美都が困惑して凍りついている間に、杏樹は携帯端末を操作し「アポイントはいつがいいかしら~」とさっそくなことを言っている。

「で、ですが、こんなに素敵な方ですから。心に決めた女性がいらっしゃるのでは?」

「釣書をくれたくらいだから、特定の恋人はいないと思うわ」

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