執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
待ち合わせをしたホテルのラウンジに現れたのは、上品なワンピーススーツを身に纏った淑女。歳は哉明より少し上だろうか。

「初めまして。喜咲杏樹と申します。本日はわざわざお越しくださり心よりお礼申し上げます」

随分と落ち着いた雰囲気の女性だ。歳が少し上どころか、かなり上なのでは……?

さらに左手の薬指にある指輪に違和感を覚えた。まるで結婚指輪だ。これから縁談だというのに、その指にリングをはめてくるだろうか。

「初めまして。獅子峰哉明です」

名乗った瞬間、彼女がずいっと顔を寄せてきた。哉明をじっと覗き込んで、鈴を転がすような声でふふっと笑う。

「長身、目の下のホクロ、とっても格好いいお顔。ふふふ。美都ちゃんの言った通りだわあ」

「……あの。美都ちゃん、とは」

「ああ、ごめんなさい。美都ちゃんはわたくしの娘ですのよ」

さすがに耳を疑った。

(彼女には娘がいるのか。この人、いったいいくつだ? というか、俺はいきなり父親になるのか?)

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