執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
困惑していると、彼女は深々と腰を折り、頭を下げた。

「娘を助けていただきありがとうございました」

「……は?」

「十二年前、娘が中学生の頃、痴漢から助けていただいたとか。お陰様で、娘は今年二十七歳になりました」

中学生、痴漢――そのワードに心当たりがあり、あれか?と首を捻る。確か大学生の頃、幼い子が痴漢被害に遭っていて、助けた覚えがある。

これまで女性を何人か痴漢から助けた記憶があるが、子どもは彼女だけなのでよく覚えている。

「……つまり、俺が縁談をするのはあなたではなく?」

「もちろん。わたくしの娘でございます。正しくは義理の娘になりますが」

彼女の事情を聞く。なにをおいても幸せにしてあげたい義娘。たくさんの縁談を用意したけれど、興味を持ってもらえず、唯一聞き出せたのが哉明の存在だったという。

「娘はきっとあなたに恋をしているんだわ」

「恋……ですか。さすがにそれはないんじゃないでしょうか。当時、彼女は中学生だったようですし、二十歳を過ぎた俺はおじさんに見えたでしょう」
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