執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
条件としては完璧な女性。あとは添い遂げる覚悟ができるか、直感による判断のみなのだが――。

「運命の人、か」

奇しくも杏樹が口にした表現を、哉明自身が使っている。

「幸せにしてやらないとな」

昨夜の彼女の蕩けた表情を思い出し、頬を緩ませる。

あの真面目そうな彼女が、自分に心を開き、身を任せてくれたのだ。

「……ジュエリーはやりすぎたか?」

笑顔のひとつも見せず、警戒しきりの美都の心を開きたくて、つい強硬手段に出てしまったが、そもそも金品で心が動くような女性ではなかった。

『そんな高価なジュエリーなんてもらわなくても私は――』

彼女の言葉を思い起こし、笑みを漏らす。

「……本人は、まったく気づいていないみたいだが」

少しずつ教えてあげる必要がある。その感情が『恋』というものであり、やがては『愛』に変わっていくことを。

「まさか、俺が愛どうこうを語る男になるとはな」

庁舎の連中が聞いたら笑うだろう。なにしろ哉明は、剛腕と周囲から恐れられているような仕事人間なのだから。



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