執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
哉明が所属しているのは警察庁サイバー特別捜査部。
その中でも今年、FBIのやり方に倣った独自の捜査機関『サイバー特殊捜査隊』、俗称『CIT』が発足し、哉明は隊長を任された。
FBIに出向中、国際指名手配されていたサイバー犯罪グループの逮捕に貢献し、その功績が称えられ、最速で警視正に登りつめた哉明。隊長に就任したのは必然と言える。
サイバー犯罪で言えば、日本とアメリカの捜査力は雲泥の差。予算や人員はもちろんだが、最大の問題はノウハウのなさだ。
その点、哉明には本場で培ったスキルと経験がある。日本の捜査レベルの引き上げに期待されているのである。
哉明は登庁後、すぐに捜査員たちのいるフロアへ向かった。
日本の警察組織といえば、リーダーは個室でふんぞり返り報告を待つもの。まずそこがアメリカとの違いだ。
指揮官たる哉明は、常に最善線に出向き指示を出す。
もちろんサイバー捜査の最前線は現場ではない。情報端末を集積しているここ、捜査本部だ。
大きなフロアを端末で埋め尽くし、正面には巨大モニターを設置。別室には物々しい機器が山積みされている。