執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
サイバー特別捜査部部長、鎌亀洋一、五十二歳。哉明よりひとつ階級が上の警視長だ。

仕事ができる以前に、悪名の高さで有名な男で、出世のためには手段を選ばず強引な捜査手法を取る。

パワハラから精神を病んで辞めていった部下も複数いると聞く。

彼が周囲からどういう目で見られているのか、ムスッとした柳川の表情が代弁してくれている。

「獅子峰さんを目の敵にするあの男に、ご丁寧に情報を流すのですか」

組織としては、特捜部の下にCITが配置されている。

だが特捜部から見れば、FBIかぶれの独自の捜査機関など目の上のたんこぶでしかない。

加えて、鎌亀と哉明には二十年分の階級差があり、自分より格下の部隊が期待の新星だとか精鋭だとか言われて、ちやほやされている状況が好ましいわけがない。

鎌亀はCITなどさっさと潰れればいいと思っているのだ。

「仕方がないさ、俺たちにお株を奪われたんだ。仲良くしてくれって方が、無理がある」

「くだらないこと、この上ありませんね。連携すれば、もっと早急に解決できるでしょうに」

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