執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
そう苦笑して、残っていた餃子をありがたくいただく。冷蔵庫に入っていたハイボールのロング缶を添えて。

なんとまあ贅沢になったものだ。美都がくるまで食事などまともにとらなかったのに。

「幸せ太りも時間の問題だな」

ジム通いを増やした方がいいかもしれない。

そんなとき、背後から足音が近づいてきた。

「哉明さん、帰ってらっしゃったんですね。お先にお風呂をいただきました」

愛らしい黒猫が頭の毛を濡らしたままやってきた。思わず目もとが緩む。

「ただいま。餃子、もらってるぞ」

「どうぞ召し上がってください」

哉明のために残しておいたのだろうが、なんの感慨もない様子でスンと答える。

しかし、ちらりとこちらの様子をうかがっているところを見るに、口に合ったか気にはなっているのだろう。

「うまいぞ」

「……それはよかったです」

美都が背中を向けてうつむく。一瞬、口もとをふんわりと綻ばせていたのが見えて、哉明はかわいいなあとしみじみ餃子をかみしめた。

美都はキッチンに入り、グラスを手に取った。ふと振り向き、テーブルの上にあるハイボールに目を向ける。

「お前も飲むか?」

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