執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「……哉明さん、大変です。記憶がありません」

「記憶がなくなるタイプか」

余計に危なっかしい。

美都は素肌を隠しながら、毛布に口もとを埋めてぽつぽつと語り始める。

「いえ……少しだけ、覚えてます。ここまで運んでもらったこととか……水を、飲ませてもらったこととか……それから、ええと……その」

言い淀んで真っ赤になる。

「安心しろ。その記憶で全部だ」

しっかり覚えていて安心した。哉明は上半身を起き上がらせ、床に落ちていたスラックスを拾い上げた。

結局美都を抱き尽くしたまま眠ってしまった。まだシャワーも浴びてない。

「シャワー、浴びてくる」

そう言って起き上がろうとすると、美都がじっと哉明を見つめていることに気づき動きを止めた。

「どうした?」

返答はなく、ただ物欲しそうにじっと哉明を見つめている。まさかと思いつつも、顎を押し上げ、そっとキスをした。

「おはよう」

「……おはようございます」

頬を赤く染めた美都が、小さな声でうっとりと呟く。

(おはようのキス待ちかよ)

かわいすぎて悶えそうになる。

< 148 / 257 >

この作品をシェア

pagetop