執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
警視庁内独自ネットワークでの犯行。インターネットには繋がっていない閉じられた空間なので、外部への情報漏洩は免れたが、逆に言えば犯人は直接内部に侵入し悪意あるプログラムを仕込んだことになる。

警視庁のサーバー室に犯人が潜り込んだということだ。

「被害は?」

「サーバーが一機修復不能になりました。データ自体はバックアップがありますので、機器を取り寄せ次第復旧できるとの見込みです」

「金銭などの要求は」

「今のところありません。……正直、犯人の目的がわかりませんね。こちらをおちょくっているとしか思えません」

全体未聞の挑発行為だ。警察組織のずさんさ、そして自分たちの技術力を誇示したかっただけ、そうとしか思えない。

捜査員のひとりが声をあげる。

「モジュールを特定。犯罪集団TSUBAMEのフレームワークと九割一致しました」

「つまり、警視庁内で働く警察官、もしくは業者の中にTSUBAMEのメンバーがいる……」

驚く柳川をよそに、哉明は捜査員に指示する。

「サーバーの入室記録やログイン履歴を見ればモジュールを配置した人間が特定できるはずだろ」

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