執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「モジュール内に使われているパスワード、テキスト情報のいたるところに、喜咲美都に繋がる痕跡が記されています」

誕生日、家族の名前、実家の座標など、美都の情報がプログラム内の目立つところに配置されている。

まるで美都の存在を指し示すかのように。

「喜咲美都は十中八九、陥れられたんでしょうね」

犯人が美都なら、ここまで主張する必要がない。柳川はため息をつきながら哉明を一瞥した。

「そんなに恨みを買うような人物なのですか? 獅子峰さんの婚約者は」

「まさか。品行方正な一般市民だ」

さすがに頭を抱えて項垂れる。美都を犯人だとは思わないが、ここまであからさまに名前を出されると捜査せざるを得ない。さすがの哉明でも庇い切れそうにない。

「それにしたって、彼女を捜査線上に押し上げようとしている人間がいるのは確かです。犯罪組織から目をつけられているなんて、ただの怨恨ではないかもしれませんよ?」

正義と革命を謳う犯罪集団の犯行だ。背景にはなんらかの政治的な理由があると考えられる。

美都の周辺で目立つ人物といえば、義祖父の弁護士だろうか。

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