執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
孫が逮捕されれば、彼の足を引っ張ることも可能かもしれないが――いまいち目的としては薄い。

情に流されそうになるのを踏みとどまり、冷静に、いつも通りの指示を出す。

「彼女の周辺を徹底的に洗え。……って、まるで俺を洗えと言っているようなものだな」

自嘲したそのとき、とある事実に直面する。

「……まさか目的は、俺か?」

クラッカー集団にとって一番の敵であるCIT。そのトップである哉明を陥れようとしていると考えた方が腑に落ちる。

「ですが、まだ入籍はしていないんですよね? 結婚してからではなく、なぜこのタイミングなのでしょう? 結婚してから伴侶が不祥事を起こせば、確かに獅子峰さんも責任を取らされるのでしょうけれど、今なら婚約が破棄される程度で大したダメージは――」

そう言いかけた柳川だったが、ふと見上げた先にある哉明の顔を見て考えを改める。

「……脅しや警告、嫌がらせという意味では、効果てきめんでしたね」

美都に容疑がかけられた状態では、キャリア警察官とは結婚できない。婚約を破棄するしかない――哉明は口もとを押さえたまま項垂れる。

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