執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
想像以上に堪えている自分に気づく。美都は犯人であるはずがない、そう確信しながらも、心が揺さぶられる。

いつもの捜査をしろ、そう自身に言い聞かせ、姿勢を正した。

「喜咲美都、本人から事情を聞く」

柳川は少々驚いたように顔を上げ、哉明を覗き込んだ。

「……かまわないのですか?」

「こうも出揃っている以上、スルーしてはおけないだろ」

普段の捜査なら哉明はそうする。本人から聴取するのが手っ取り早い。

相手の顔色を見れば、嘘をついているのかも一目瞭然だ。

――今の動揺しきった哉明に見破れるかは疑問だが。

「それに彼女が犯人でない場合は、彼女にモジュールを渡した人物がいるはずだ。情報を聞き出せ」

「わかりました。獅子峰さんが自らお話を伺いますか?」

「聴取はお前に任せる。今すぐ彼女のもとへ向かえ」

「……本当に私でいいのですね?」

柳川はきちんと仕事をする人間だ。もしも美都が素直に白状しない場合、手荒な真似をする恐れがある。

それをわかっていても、被疑者となった美都を特別扱いなどできない。CITのトップが身内に甘かったら、周囲に示しがつかない。

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