執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「被疑者は被疑者だ。特別扱いするつもりはない」

「わかりました」

早速柳川は捜査本部を出ていく。哉明は腕を組みモニターを見つめながら黙り込んだ。

(今回の犯行に社会的影響力はゼロ。身代金目的でもない。ただ嫌がらせのためだけにわざわざ警視庁内に入り込んで犯行に及んだというのか?)

企業への攻撃ならば世界中のどこからでも犯行可能。よって被疑者は不特定多数。

だが警視庁内に侵入すれば確実に痕跡が残り、犯人が絞られる。リスクを冒してまでするようなことではないはずだが。

(本当に俺が目的なのか? 確かに、俺個人を攻撃したいだけなら効果的なのかもしれないが)

犯人を捕まえて美都にターゲットを絞った理由をはっきりさせなければ、美都の嫌疑は晴れない。

捜査資料に名前が残り、今後も要注意人物としてマークされ続ける。

それだけで哉明は美都と結婚できなくなる。哉明は幹部候補、犯罪の嫌疑がかかった人間とは一緒になれない。

(ただの怨恨なのか? 本当に? だとしたら組織的な犯行ではなく、メンバーの暴走という可能性も)

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