執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
第六章 もう婚約者ではなく
哉明と体を重ねたのは三回。初めての夜。そして週末の二日間。
間にお酒で記憶が飛んでしまった日があるのだが、あれもカウントしたら四回になる。
とにかく、予想以上に甘く蕩けた同棲生活を送っているのは確かだ。
その日の朝、通勤電車に揺られながら、美都はビジネス用のトートバッグを胸もとでキュッと抱きしめた。
(寝ても覚めても、哉明さんのことしか考えられない……なぜ)
哉明の優しい顔、おどけた顔、美都を抱くときの鋭い顔が頭の中を交互に占拠して、なにも手につかない。
と言いつつ、仕事と家事はきちんとこなす真面目な美都だけれど。
(これはなにかの病気かもしれない。脳の異常的な……)
恋、と言う名の病を、美都はまだ知らない。