執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
赤坂庁舎内。午前中の会議を終え、ぼんやりと廊下を歩く。

これから昼休みだ。美都はお弁当を持参している。

(哉明さんはなにを食べているんだろう? 警察庁って食堂はあるのかな? キャリアだから高級な幕の内弁当を注文してたり? でも哉明さんのことだから栄養補助食品で簡単に済ませていそうな気もする……。哉明さんの分のお弁当を作ったら、迷惑かなあ?)

そんなことを考えながら歩いていると。

「――さん? 喜咲さん!」

不意に肩に手をかけられ、驚いて足を止めた。

振り向くと大須賀が立っていて、心配そうな顔で美都を覗き込んでいる。

「あっ、すみません。なにかご用が?」

「いえ、とくに用はないのですが。何度話しかけても返事がなかったので。大丈夫ですか?」

「失礼しました。考え事をしていて」

美都は深く腰を折って謝罪する。大須賀はいたたまれない表情で「あー」と頬をかいた。

「なにか悩みごとでも?」

「いえ。まったくそういうわけでは」

悩んではない。どうしようもないことに思考を占拠されているだけで。

なにも答えずただ否定だけすると、口では説明できないなにかがあると悟ったのか、大須賀がおずおずと口を開いた。

「もしかして、彼氏さんとトラブルでも?」

「は?」

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