執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
一瞬フリーズする。婚約者でも恋人でもなく『彼氏さん』――これはまた新しい表現だ。でも、結婚を前提にお付き合いしているのだから、彼氏で正しいはず。

新鮮な響きにむずがゆくなる。

「問題ありません。ご心配なく」

「そう、ですか……あ」

ふと大須賀が思いついたかのように、手をポンと打ち合わせる。

「お昼、まだですよね? このあと、一緒に食べませんか?」

「えっ……お昼、ですか?」

庁舎内に勤めている同僚たちと食べることはあっても、職員の方に誘われたのは初めてだ。

美都としては顧客をおいそれと誘ったりはできないし、大須賀たちは自室で食べるのが文化のようだったから、とくに声をかけたりはしなかった。

「九階の休憩スペースにお昼ご飯を持って集合です」

「……いいんですか? 私がご一緒しても」

「警察官以外の方と食べちゃいけないなんてルールはありませんから、大丈夫です」

にっこりと微笑むと、大須賀は「またあとで」と手を振っていってしまった。

なぜ突然お昼に誘われたのだろう。

(よっぽど悩みがあるように見えたのかな)

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