執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「じゃあ、私と一緒にお礼を伝えに行くっていうのはどう? 縁談じゃなくて、ただ会ってお茶をするだけ」

杏樹がパンと手を打ち合わせる。それなら、と美都も頷く。

「わかりました。お礼を伝えるだけ、ですね?」

「よかった! じゃあ、かわいいお洋服を買いに行かなくちゃね。コスメも新調しましょう」

秒で後悔が脳裏をよぎった。面倒なことになりそうだ。

「あの……お義母さん? お礼を言うだけなら、普通の格好でいいのでは?」

「あら、相手はキャリア警察官なのよ? 将来は警察庁長官か警視総監か長官官房の官僚か……とにかく立派な方なのだから、きちんとした格好でお会いしなければね?」

そんなにすごい人だったの!? と美都は蒼白になる。

「あの、やっぱり――」

お会いできなくていいですと言おうとしたそのとき、杏樹の携帯端末が震えた。

「まあ、さっそく会ってくださるって! 再来週の日曜日よ。じゃあ、今週の日曜日はお買い物デーにしましょうね」

退路が絶たれ、沈黙する。

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