執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
料理はしないし掃除や洗濯は外注、結婚は三分で決断、とんでもない金額のジュエリーを美都にあっさりと貢いでしまうなど、哉明には驚かされてばかりだ。

でも――。

「私は彼を信じています」

そっと大須賀の手を解くと、彼は珍しく暗い顔をした。

「あなたがそういう方だから心配なんです。喜咲さんは、きっと騙されていても気づかない」

「そんな。騙されているだなんて」

「そういう人種なんです、キャリアという人たちは――」

そのとき、足音が近づいてきてふたりは顔を上げた。

「お食事中に失礼します」

凛とした姿勢で声をかけてきたのは、ネイビーのスーツを着た女性だった。

清潔感のあるショートヘアに強烈な目力。

ざっくり言えば逞しい美女である。身長は美都よりも高く、肩幅の広さからアスリートのような印象を受けた。

「ステラソフトの喜咲美都さんでよろしいでしょうか?」

どうやら美都に用があるらしい。驚いて肩がぴくりと揺れる。

「はい。そうです」

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