執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
ただでさえ人見知りで、男性と会うだけでも気鬱だというのに、相手は恩人、加えて立派なキャリア警察官、そして正装での会食――憂鬱のトリプルコンボである。

育ちのいい杏樹に任せておけば失礼をすることはないだろうと思うけれど。

(しばらく着せ替え人形になるのね……)

表情が無になる。どうしようもないとき、ただでさえ感情表現の乏しい美都の表情は完全に消え失せる。

スンとした顔のまま、ふらふらと自室に戻った。



二週間後の日曜日、獅子峰哉明にお礼を伝えに行く当日。

これから出かけるというときに、杏樹がお腹を押さえてリビングのソファに横たわった。

「痛たたたたた。悪いものでも食べたかしら、困ったわ」

父・隼都が「杏樹さん、大丈夫?」と彼女の横に座り手を握る。

「お父さん。悠長に手を握ってる場合じゃないわ。病院を探さないと」

今日は日曜日、受診できる病院は限られている。美都はすかさず携帯端末で休日診療可能な病院を探し始めるが。

「大丈夫よ。少し横になっていれば収まると思うの。それより美都ちゃんは獅子峰さんのところへ行って」

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