執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「お前なんかにかわいい婚約者の聴取を任せられるか」

哉明がやれやれと立ち上がる。こんな場所でものんびりとした態度に、美都は少なからず安堵した。

「忘れてないぞ、FBI時代に被疑者の関節外して捻り上げたの。暴徒を手刀で眠らせたことも」

「スラム街のチンピラ相手ならともかく、日本で、しかもシロかもしれないお嬢さんにそんな手荒な真似は致しません」

チンピラ相手ならするんだと怯えつつ、美都は哉明に手を引かれて奥のソファに腰を下ろす。

哉明は隣に座り「お疲れ」と甘く囁いた。

美都は平静を保って「お疲れ様です」と答えつつも、場所とシチュエーションが特殊なだけに少しドキドキとしている。

気づけば柳川が眉間に皺を寄せてこちらを眺めていた。

「まったく調子のいい方ですね。部下の前では威厳を漂わせて『聴取はお前に任せる』とか言ってたくせに」

「仕方ないだろ、あの場ではああ言うしかなかったんだから」

「だいたい座り方がおかしいでしょう。獅子峰さんはこっちに座ってください」

「そんなにプレッシャー与えちゃかわいそうだろ。ただでさえ柳川の聴取は怖いんだから、俺が隣にいてやんないと」

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