執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
美都は昨日の作業をできるだけ詳しく、順を追って説明する。

ふたりは真剣に聞いていたが、ひと通り話し終えたところで哉明が美都の頭にポンと手を置いた。

「ありがとう、美都。充分だ」

しかし柳川は「もうひとつ、伺いたいことが」と口を挟む。

「誰かに恨みを買った覚えはありますか? あなたの婚約が破談になって喜ぶ人物は?」

哉明が美都の肩を強く引き寄せる。ふと見上げると、これまでとは打って変わって険しい表情をした哉明がいた。

「柳川。その質問は無意味だ」

「聞きづらいのはわかりますが、報告書に書かないわけにはいきません」

険悪な空気を感じつつも、美都はおずおずと口を開く。

「私はなんの容疑にかけられているのでしょう? 婚約が破談になるほどのことなんですか?」

哉明と柳川は口を引き結んで沈黙する。捜査に関する話を口外できない、ということだろうか。

「どうしても気になるんでしたら、家に帰って〝婚約者の方〟に伺ってみてください」

つまり警察官としては答えられないが、家に帰って哉明に聞く分には目を瞑ると言いたいらしい。

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