執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「……恨みを買った覚えはありません。そういった人物にも心当たりがありません」

美都が答えると、柳川が部屋のドアを開けに向かった。もう帰ってもいいということらしい。

「悪いようにはならないから心配するな。家で待っていてくれ」

哉明は美都を抱いてなだめると、部屋の外へ送り出す。

「失礼します」

もやもやとした気持ちを抱えたまま、美都はひとりエレベーターに乗り込み七階のボタンを押した。

(哉明さんと結婚できないかもしれない……?)

サーバー室での手順を詳しく聞かれたことから、警視庁のシステムに対して悪さをしたと疑われているようだ。

そういえば大須賀もサーバーで問題が起きたと言っていた。

(もしも結婚できなかったら……どうすればいいんだろう。哉明さんは別の女性を探して、私は実家に帰って、それから……)

あれほど結婚に躊躇っていたのに、いざできないと言われると動揺している自分がいる。

一緒に暮らしているせいか、あるいは体を重ねたからだろうか。もう哉明なしの生活は考えられない。

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