執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
いい加減、手を止めたのは二十二時過ぎ。どっと疲れが押し寄せてきてソファにへたり込んだ。

「こんなに作って、どうしよう」

明日、お重のお弁当でも持っていこうか。鶴見や筧に助けを求めれば一緒に食べてくれるかもしれない。

(なにをしているんだろう、私は)

まだ婚約を破棄したいと言われたわけではないのに不安が拭えない。

(心配するなって言われたけど)

だが破棄される可能性は高いような気がした。美都を選ぶメリットといえば、真面目で問題を起こさないくらいのものだろう。

そのふたつさえダメだったのだから、これ以上繋ぎ止めておく必要がない。

ぼんやりと日中、話を聞かれたときのことを思い出す。

(そういえば、柳川さん、だっけ? 綺麗な人だったな)

警察庁に勤めていて、あの若さで哉明の右腕を務めるくらいなのだから、さぞ優秀なのだろう。

FBIがどうこう言っていたところを見るに、哉明と一緒にアメリカに出向していたのかもしれない。

(ずっと一緒ってことか……随分と親しそうだったけど)

< 175 / 257 >

この作品をシェア

pagetop