執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
見た目の親しさは一目瞭然。だが哉明が仲間として見ているのか、女性として見ているのかは判断できない。

柳川が結婚しているのか、恋人がいるかも美都は知らない。

(でも、ああいう方と結婚すれば、哉明さんの出世にもプラスになる気がする)

柳川がいいのではないか。そんな気持ちが湧いてきて、自分がひどく不釣り合いに思えてくる。

自分には哉明のそばにいる権利があるのだろうか。

(哉明さんの足を引っ張るくらいなら、私から別れを告げた方がいいかもしれない)

じわりと涙が滲み、堪えきれなくなる。ソファの上で顔を覆った。

こんなにたくさんの料理を作っても、今日、哉明は帰ってこないかもしれない。もちろん美都に食欲などない。

「私は、どうしてこんなに……」

悲しいのだろう。結婚してもしなくても、どちらでもよかったはずなのに、なぜ執着しているのだろう。

(ひとりは……寂しい)

哉明と出会って、信頼できる人とふたりで過ごせる充足感を知った。

なぜ杏樹があんなにも『いい人に巡り会えないなんてもったいない』と言っていたのかわかった気がする。

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