執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
ここで泣いてしまったら、きっと哉明は美都を甘やかしてしまって、対話にならないだろうから。

「婚姻届を出してしまったら、もう哉明さんは……!」

後戻りができない。キャリアとしての地位を失うかもしれない。

自分を守るために哉明がすべてを失うのだとしたら、守ってくれなくていい。

ふたりのこれまでをなかったことにしてくれてかまわない。それが哉明のためだと言うのなら――。

とうとう涙がほろりとこぼれ落ちて、頬を伝った。

哉明はしばらく呆然と美都を見つめていたが、そっと近づいてきて、指先で涙を拭う。

「……美都の容疑については、俺や柳川はシロだと思っている。だがシロの証拠が必要だ。でなきゃ周りの連中は納得しない。結婚についても同じで、証拠さえ見つかれば誰も文句は言わない」

「では……その、シロの証拠が見つかるまで――」

待っている、そう言いかけようとした矢先、哉明が美都の手を引いた。

「証拠は見つける。美都を被疑者のままにはしない。俺の全キャリアを賭けてでも、必ず見つけてやる」

反論を遮るかのように顎を持ち上げられ、唇を奪われる。

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