この結婚は運命ですか?~エリート警視正は清く正しい能面女子に首ったけ~
第七章 魅せたいのはあなた
翌日。美都は巨大な風呂敷をもって登庁した。

「おはようございます」

「っ、え、喜咲さん、いろいろどうしちゃったんですか?」

美都の腫れぼったい目と風呂敷を交互に指さし、鶴見が驚きの声をあげる。

筧も興味深そうに、こちらを覗き込んでいた。

「まず、これはお弁当です。夕べ、少し作り過ぎてしまって」

「……少しの量じゃなくない? 嫁が作る運動会弁当よりでかいよ?」

筧が控えめにツッコミを入れる。

「よかったら、手伝っていただけないでしょうか。私一人では食べきれないので」

「それはありがたくいただきますけど。でも、そっちの方は? 眼科に行った方がいいレベルで腫れてますけど」

鶴見がおずおずと美都の目を指さす。美都は瞼を押さえながら説明した。

「お恥ずかしながら、主人と喧嘩しまして。普段泣いたりしませんので、反動でひどく腫れてしまって」

これでも冷やして少しはマシになった方である。だが残念なことに、美都の切れ長の目にこの腫れはとても目立つ。

鶴見が首を傾げながら、風呂敷をまじまじと眺めた。

「喧嘩って……このお料理についてです?」

「これはその副産物のようなもので」

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