執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「ご予約の喜咲様ですね。ご案内いたします」

シックなスーツを着たスタッフに先導され、美都はラウンジに入る。

地上二十五階、大きな窓から青空とビル群が見える。

ふかふかの絨毯に、煌びやかなシャンデリア、曲線が優美な調度品。エレガントな空間に緊張が高まる。

客はリッチなマダムやスーツを着た紳士、とびきりおめかししたレディなど。

思わず自身の格好を見下ろし、大丈夫よね?と確認する。

杏樹が選んでくれたのは、ペールピンクのワンピースだ。有名ブランドのもので十万円もする。

美都は高すぎると断固拒否したが、『お祖父様からのプレゼントだと思って受け取って』と丸め込まれてしまった。

バッグやパンプスも同メーカーの高価なもの。お財布まで買ってもらった。

プチプラ派の美都には抵抗があったが、今となってはその価値が『ここにいてもいいよ』と背中を押してくれている。

「こちらでございます」

そう言って案内されたのは、窓際のテーブル席。眺めがとてもいい。

だが椅子がふたつなのはどうしてだろう。杏樹の欠席はまだ店にも相手にも伝えていないはずだが。杏樹が気を利かせて連絡したのだろうか。

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