執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「ああ、彼氏さん、キャリア組ですもんね。結婚となると、組織も絡んできて大変なんでしょう」

大須賀が気遣わしげな表情で覗き込んでくる。

美都はぺこりと一礼して「実は」と切り出した。

「昨日婚姻届を提出して、晴れて入籍いたしました」

報告すると、大須賀は予想外だったのか「え」と声をあげて固まった。

「で、でも……その、大丈夫だったんですか? 結婚、できたんです? いろいろとあったのでは」

一瞬ドキリとはしたものの平静を保つ。大須賀は美都に容疑がかけられていると知らないのだから、今の質問に深い意味はないだろう。

「いろいろ、と言いますと……?」

とぼけてみると、大須賀は困ったように目線を漂わせた。

「結婚に反対されているから、昨日呼び出されたのかな、と思ったものですから」

「いえ、そういうわけでは。主人の同僚の方とご挨拶したくらいで」

「そうでしたか……」

予想が外れたせいか、大須賀は後頭部に手を回して照れ隠しのように頭をかく。まだ驚きが冷めないのか「ええと」と切り出した。

「では、その、これからは『獅子峰さん』とお呼びした方がいいんですかね?」

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