執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「しばらく仕事中は旧姓を使おうと思っていますので」

「そうですか。じゃあ、今まで通り『喜咲さん』で。わざわざ報告に来てくださって、ありがとうございました」

大須賀は額に手を当てて、敬礼のポーズをする。

「ご結婚、おめでとうございます。末永くお幸せに」

キリッと表情を引き締めて祝福してくれる姿に、美都はホッと胸を撫で下ろした。

「ありがとうございます」

深く一礼して、大須賀と別れる。

オフィスに戻りながら快活な敬礼を思い出し、本当に警察官の鑑のような人だなと晴れやかな気分になる。

「……あれ?」

しかし、ふと気がついて足を止めた。

「私、新しい名字を大須賀さんにお伝えしたっけ……?」

やり取りの中で大須賀が『獅子峰さん』と口にしたが、教えた覚えがない。

「……きっと本庄主任に聞いたのね」

でなければ知るわけがない。そう納得して、オフィスに戻った。



その日の帰り道。美都はコンビニに立ち寄った。雑誌売り場で足を止め、難しい顔で一冊のファッション誌を手に取る。

普段はファッション誌など買わない美都は、少々緊張しながらレジに持っていく。

< 191 / 257 >

この作品をシェア

pagetop