執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
(自信がないからってブランドに頼るのはやめよう。プチプラのショップで高見えする服を選んで――)

やると決めたらきちんとやる、とことんストイックな美都である。真剣に傾向と対策を練る。

読み進めていくと、ふとヘアカタログのページに差しかかった。

「そういえば髪型、ずっと変えてないな」

幼い頃から黒髪ストレートのまま。なにしろ呪いの日本人形と言われるこしの強さである。ショートにしたらツンツンしそうだし、ボブにしたら人形から座敷童に格上げだ。

ショートヘアのモデルを見て、ふと昨日を思い出す。

「……柳川さんのショートカット、格好よかったな」

知的で、凛としていて素敵だった。目力が強く美人なのもあるだろう。涼やかなショートがとてもよく似合う人だった。

ぼんやりとそんなことを考えていると。

「柳川がどうしたって」

突然うしろから声が響いてきて、美都は「っっっ!」と体を引きつらせた。バクバクする心臓を押さえて振り向く。

いつの間にか背後にスーツ姿の哉明が立っていて「ヘアカタログ? 髪切るのか?」と雑誌を覗き込んでいた。

「いつの間に」

「ちゃんとただいまって言ったぞ」

< 193 / 257 >

この作品をシェア

pagetop