執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
それだけ美都が集中していたのだろう。ドアが開く音にも、足音にすら気づかなかった。

「美都はどんな髪型にしたいんだ? ショートか?」

スーツのジャケットを脱ぎソファの背もたれにかけ、美都の隣に腰を下ろす。

「柳川さんはショートがお似合いでしたね」

「ああ。というか、あの髪型以外見たことがないな」

「……長い付き合いなんですか?」

「ああ、年次もまあ近いし、昨年FBIに出向していたキャリア組は俺たちだけだったから――」

言いかけたところで、哉明は美都のじっとりとした視線に気づき、言葉を止める。

「まさか、なにか疑っているのか?」

「いえ」

長い付き合いだと聞いただけで、なぜこんなにも胸がもやもやするのか。あきらめて静かに目を閉じる。

すると、両頬を包み込まれ、顔を持ち上げられた。

「なにか隠しているな。素直に言ってみろ」

「い、いちいち顔色を読むのはやめてください」

「嫉妬か?」

そのひと言で美都の胸の内に膨らむ不愉快な感情に説明がついた。

哉明は「そうかそうか」となぜか満足そうな顔をしている。

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