執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
テーブルの上には署名入りの婚姻届。哉明が強引に言質を取って、美都に書かせたものである。

書いて三分後にはこうなっているのだから、この男の気の早さには呆れかえる。

とはいえ書いてしまったからには責任を取らなければならないとも美都は思う。

なにより、貪欲な肉食獣のごとき眼差しが、このまま何事もなく逃がしてくれるとは思えない。

「欲しい。美都を抱いて、全部俺のものにしたい」

核心的な台詞に逃げ場を失う。哉明の手が、物欲しそうに美都の腕を撫でている。

恋も愛もわからない――とはいえ、ここまで情熱を向けられて揺らがないような鉄の意志はない。

鼓動が速まり、体温が上昇していく。

自分はこの男に、今ここで食べられてしまうのだろうか。そう思うと体の奥が蕩けそうになる。

して欲しい、そう感じている自分がいる。

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