執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
ふと携帯端末を確認すると、いつの間にかチャットメッセージが届いていた。

【初めての縁談、頑張ってね! 美都ちゃんなら大丈夫】

文章を見るに合流するつもりはなさそうだ。

「まだお腹が治らないのかしら……。お父さんが一緒だから心配はないと思うけど」

それにしても気がかりなのは〝縁談〟というワード。

「……まさか、最初からそのつもりで?」

ハッとしたそのとき、スタッフが男性客を連れてやってきた。

うしろにいるブラックのスーツを纏った精悍な人物を見て、呼吸が止まりかける。

「お待たせしました。初めまして――ではないんだったか」

そう言って正面に立ったのは、獅子峰哉明、その人だった。

存在感に息を呑み、思わずその場ですくっと起立する。

(オーラがすごい。こんな人、見たことない)

直視するのを躊躇われるほどの美貌、そして威厳、三十三歳とは思えないほどの貫禄。写真で見るよりもずっと逞しく男前である。

十二年前とは似ているようでまったくの別人が目の前にいる。

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