執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
真面目で、とても真っ直ぐな人だ。歪んだところのない、綺麗な心の持ち主。

「それを言うなら喜咲さんこそ。本庄主任なんて、毎年ステラソフトの営業さんにバイネームで喜咲さんをつけてってお願いしているんですよ」

「そうなんですか?」

「ええ。担当していただけるなら、真面目で熱心な方がいいので」

「光栄です。これからも、今以上に頑張ります」

恭しく一礼する美都を見て、大須賀は「もう充分ですよ」と笑みをこぼす。

そんなやり取りをしている間に、結構な距離を歩いた気がする。

入り組んだ住宅街、人通りはなく、どこか薄暗くて不気味だ。近くに店の灯りは見えないが、本当にこんな場所に花屋があるのだろうか。

時間が遅すぎてクローズしてしまったのでは、そう思った矢先、屋外駐車場の前で大須賀が足を止めた。

「……すみません。思っていた道と違ったみたいで」

どうやら迷ってしまったようだ。端末のGPSを見ながら、あたりを確認している。

「ええと……お店の名前はなんでしたっけ?」

一緒に検索しようと立ち止まり、端末を手にして下を向いたところで。

「……喜咲さん。すみません」

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