執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「喜咲さんに好意を抱いていたのは本当です。真面目で仕事熱心で、正しい生き方をしているあなたがすごく好きだった。ごく普通の会社員と結婚すると言われたなら、僕は心から祝福していたと思います」

でも、と言ってナイフを握る手に力を込める。

「警察官はダメだ」

ひやりとした刃が首に当たって、ぞくりと背筋が冷えた。

「あなたを警察官に、しかもキャリア組の人間に奪われるのだけは納得がいかなかった」

強く刃を押し当てられ、血の気が引いた。今にもナイフを引きそうな憎悪を含んだ声。過去にキャリア警察官との間になにがあったというのだろうか。

「だからサーバーに仕掛けをして、あなたに疑いがかかるように仕向けたんです。出世の邪魔になる女は、さっさと切り捨てるだろうと思って。ですが、まさか逆に入籍してしまうなんて想定外でした」

大須賀の独白に愕然としながらも、背中を押されるがまま、ゆっくりと、ゆっくりと足を進める。

ひとつ間違えれば首に刃が食い込み、鮮血が噴き出るだろう。そんな恐怖に絡め取られる。

「婚約破棄が目的だったんですか?」

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