執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない


***



警視庁庁舎の一室に美都を呼び出し、聴取を終えたあと。

哉明と柳川は捜査本部に戻る道すがら、今後の方針を確認した。柳川がハンドルを握りながら、ふと切り出す。

「喜咲美都に同行を求めたとき、少々気になることが」

柳川はなんの根拠もなく違和感を口にする人間ではない。十中八九、普通ではないなにかが起きたのだと哉明は判断する。

「なんだ?」

尋ねると柳川は、自身の思考を整理するように切り出した。

「まず喜咲と一緒にランチをしていた男性が、彼女の手を親しげに握っていたことと――」

「は? 誰だそいつは今すぐ連行しろ」

「……冗談はそれくらいにして」

「待て、今のは冗談なのか? 手を握ってたってのは冗談なんだな?」

しつこく食い下がってくる哉明に、柳川はひとつ咳払いをする。

「その一緒にいた男性についてなのですが――」

「本題に行く前にその件をはっきりさせろ」

助手席に座る哉明の血走った目を見て、今の上司に仕事の話ができるだろうかと不安になる。

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