執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「……事実ですが、その件は一旦置いといてください」

「置くんじゃない! そのときの状況と美都の反応を詳しく聞かせろ」

埒が明かない気がしたので、反論は放っておくことにする。

「――その男性について」

「おい、スルーするな」

「妙に勘が鋭くて違和感を覚えました。今朝、警視庁のサーバーに起きたクラッキングの件――一般職員には不具合のため一部システムが使えなくなったとしか通達していなかったにもかかわらず、彼は『警視庁内のサーバーで問題が起きた』と口にして、嫌疑が喜咲に向かうことも把握しているような言動でした」

ようやく平静を取り戻した哉明が、深刻な顔で眉をひそめる。

「その男は警視庁の職員か?」

「はい。戻り次第、人物の特定とこの数日間の行動を洗い出します」

「その男を最有力被疑者として、身元や庁舎内外の行動、PCの中身を徹底的に洗い直せ」

鋭く指示する哉明を、柳川は運転を続けながらちらりと覗き見る。

「……私怨ですか?」

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