執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
そのとき、本部の捜査員から再び通信が入った。

「喜咲のGPSの信号が途絶えました! 端末の電源が落とされた、あるいは破壊されたものと思われます。場所はマーク中の駐車場前」

大須賀が実力行使に出た可能性がある。

(美都……!)

焦燥が一気に背筋を駆け抜ける。だがここで焦って選択を間違えば、美都を危険に晒すだけだ。

「所轄に応援要請! 付近に配備させろ! サイレンはこちらの動きが知られるまでは鳴らすな。俺は単独で先行する」

「獅子峰隊長がひとりで行かれるのですか!? 所轄の我々も――」

「俺だけなら捜査とは無関係だと白を切れる。人質を危険に晒したくない」

CIT隊員が差し出したインカムをすぐさま装着する。透明なプラスチック型の無線イヤホンで、夕闇も幸いして相手からは見えないだろう。

「そこで降ろしてくれ。被疑者は車で逃走する可能性がある。すぐに追えるようにしておけ」

運転手とCIT隊員に車内待機を命じ、助手席の捜査員についてはいつでも援護できるよう外での待機を命じる。

「行ってくる」

インカムの向こうにいる捜査本部の面々にそう告げると、車を降り足音をころして近づいた。

駐車場手前の角を曲がったところで、あえて足音を響かせてゆっくりと歩く。

偶然を装い駐車場の前に行くと、落ちていた美都の携帯端末を拾い上げ、周囲を見回した。





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