執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「インカムを壊した。これで俺たちの会話が上に聞かれることはない」

壊れたプラスチック片を見せつけるようにこちらに蹴り飛ばし、哉明は腕を組む。

「今度こそ取り引きしよう。俺が鎌亀洋一を失脚させてやる」

「なにを言ってるんだ、あんたは」

「あの男は察庁内でも悪名が高い。過去になにをしていようが驚かないよ」

大須賀が警戒心をあらわにする。だが興味はあるらしく、哉明の話にじっと耳を傾けている。

「つまり、君のほかにも被害者がいるって話だ。過去の横暴な行いが明るみに出れば、上も裁かないわけにはいかない。キャリア組ってだけで胡坐をかいてた昔とは時代が違うからな」

「……お前が僕に代わって、あの男を粛清する、と?」

「俺は俺で、あの男がいると自由に動けなくて困るんだ。組織にのさばる膿を出し切りたい。利害は一致しているだろう?」

大須賀は美都から腕を離し、両手でナイフを握って哉明へ向ける。

「代わりに僕を逮捕するって? そんな一方的な提案、呑むと思ってるのか」

< 217 / 257 >

この作品をシェア

pagetop