執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
「動くな! 僕はお前を信じるとは言っていない!」

「決断を急げ。異変を察知した捜査員がすぐに駆けつけてくる。今なら俺や美都にナイフを向けたことも不問にできる」

美都がさらに一歩を踏み出す。背後の大須賀の反応を見ながら、神経を逆撫でしないように、ゆっくりと。

伸ばした手が哉明の指先に触れる、その瞬間、大須賀が大声を出して動いた。

「警察は信じない!」

「美都、来い!」

ふたりがそう叫び美都に手を伸ばしたのは同時だった。

先に美都の腕を掴んだのは哉明だ。強く引いて大須賀から引き離すと、庇うように抱き寄せた。

「聖人ぶるな、欲にまみれたキャリアどもめ!」

人質を奪われ逆上した大須賀がナイフを振り上げ襲いかかってくる。

「美都、伏せてろ!」

美都を背後に突き飛ばし、自身は行く手を遮るように真っ向から立ち向かう。

「哉明さん!」

へたり込んだ美都。振り向くと、庇うように立ち塞がった哉明が、胸もとにナイフを突き立てられているかに見えた。

「っ……!!」

悲鳴をあげそうになる。

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