執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
しかしよく見れば、哉明はナイフを持つ腕をしっかりと掴んでおり、体を半回転させ勢いをいなし、大須賀を地面へと組み伏せた。

「ぐあっ――」

コンクリートに胸を強く打ち付けたのだろう、さらに哉明は大須賀の腕を大きく捻り上げ、その背中に膝を載せた。

「被疑者確保!」

哉明の声を合図に捜査員が一名、応援にかけつけてくる。付近で待機していたのだろう。

捜査員は無線機に向かって「被疑者を取り押さえました! 至急応援を回してください」と呼びかけ、哉明のサポートに回った。

途端にパトカーのサイレンが重なり合って鳴り響く。大須賀の予想通り、周囲を取り囲んでいたらしい。

「十八時五十五分、強要罪及び公務執行妨害で現逮」

そう言って哉明が大須賀の手首に手錠をかける。

「サイバー犯罪関連についてはおいおい追及する」

大須賀が哉明の下であきらめたように自嘲する。

「やっぱり騙していたんだな……」

「内部の膿を出し切りたいのは本心だ。お前の無念は必ず晴らすと約束する」

誠実に答えた哉明に、大須賀は「チッ」と舌打ちし脱力した。

「美都。ケガはないか?」

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