執着心強めな警視正はカタブツ政略妻を激愛で逃がさない
駆けつけてきた制服の警察官たちにその場を任せ、哉明は美都のもとに膝をつく。

「はい、大丈夫です」

まだ呆然としていて、感覚がない。自分の心臓はちゃんと動いているのだろうか。

哉明が胸にナイフを突き立てられたと思ったあのとき、全身が凍りついて、心臓が確かに止まったと思ったのだけど。

「……どこが大丈夫だ」

哉明が呆れたように息をつき、美都の手を持ち上げる。

転んだときに手をついたせいだろう、手のひらが擦り剝けて血が滲んでいた。

「あ」

さらに違和感に気づき、へたり込んだまま膝を立てる。パンツスーツのボトムスの膝も破れて血がにじんでいることに気づく。

「……手荒な真似してすまなかった」

突き飛ばしたことを言っているのだろう。だがあれは咄嗟に美都を庇ったからだ。

当の哉明は真っ向からナイフを受け止め、さらに危険な目に遭っていたのだから。

「こんなのは、平気です……そんなことより」

事件が収束した安堵からか、いつも通り毅然とした哉明の顔を見たせいか。

じわりと目から涙が溢れてきた。

「哉明さんがご無事でよかった」

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